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第3話

ホームルーム後、荷物を鞄に詰め込んでいる間に教室を出て行ってしまった東儀を慌てて追った。 人をかき分け校舎を出る前になんとか追い付き、後ろから声をかけた。 「スクランブル買った?」 「何?」 ビックリしたのか勢いよく振り向いた東儀は扉に身体をぴったりくっ付けている。 「英語の課題だよ」 「…今日言われたばかりだろ」 眉間に僅かに皺が見えるが気にしない。 「買いにいこうぜ」 「…いいけど」 困惑している東儀に無理やり一緒に買いに行く約束を取りつけた。 定期が使える範囲の大型書店へ行き、学習参考書コーナーを二人で回った。 目当てのものはすぐに見つかり会計を済ませ店を出る。 だがこのまま帰るなんてしない。 喉が乾いたと言って、駅ナカのコーヒーチェーン店に東儀を引っ張り込んだ。 俺はアイスコーヒー、東儀はアイスティーを頼み店の奥の席に座った。 白く細長い指がガムシロップの蓋を開く。 「東儀、仲がいい奴誰かいないの?」 「…ん?…特には…」 東儀がガムシロップの容器を傾けると液糖が紅茶の中でモヤを作る。 グラスの中で起きるジュリーレン現象。 だがストローでかき混ぜられ、すぐに濁りの無い琥珀色に戻った。 「同中のヤツとかは?」 「…うん…」 ふいっと目を逸らされた。 あれ?反応わるっ。 「じゃ、俺どう?」 東儀は視線を外したまま、ストローを緩く噛んでアイスティーを吸い上げた。 白い喉が上下する。 そしてやや緊張の解れた顔をして言った。 「俺、つまんないよ」 「俺だってそうだ。友達もいないし」 「同じかよ」 二人で同時に笑った。 初めて東儀はこんなに綺麗に笑うんだと知った。 何だよ、普通にいいヤツじゃん。

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