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第5話

プールの後の昼休みは天国と地獄の狭間にいるようだ。 軽く目を閉じ心地よい疲労感に身を任せてうとうとする。 ·····はしゃぎすぎたな ·····でも、意外なものが見られた… 更衣室での事を思いだして、ついにやけてしまう俺。 「…だらしない顔してるね」 上から降ってきた東儀の声にはっとして目が覚めた。 東儀は俺の前の席に座って後ろを向いた。 ·····ヤバい…気になる… 眠いはずなのに…更衣室でのことがあり、どうしても胸に目がいってしまう。 真夏なのにシャツの下にキッチリと肌着を着ているせいで胸元は平坦なまま。 開襟シャツは第一ボタン以外は閉じられ、胸どころか首元すら容易にはうかがえない。 執拗に目が胸元にいく為、東儀から視線を逸らして俺はありきたりな話をした。 「プールの後って眠いよな」 「そうだね」 そう相槌を打ってはいるが、東儀は全然眠そうじゃない。 「泳ぐの得意?」 あのフォームだ。 得意に決まってる。 「…まあ、人並み程度には」 どう見てもそれ以上だ、と心の中で突っ込む。 「他は?」 「他って?スポーツ?」 「まあそうだな」 「これといって特には…」 多分アレだ、何でも出来るヤツだ。 「もういいわ…次、なんだっけ?」 中身のない話をしていたのに眠気がなくなってきた。 「佐藤先生の英語だよ」 「ん、了解」 次の時間に備えて、俺はパラパラと教科書をめくった。 六時間目の世界史は拷問か!というほど再び睡魔に襲われたが気力で乗り切った。 東儀は眠さなど微塵も感じていないようで涼しい顔をして授業を聞いていた。 ホームルーム後、帰り支度をしていると珍しく東儀が俺を誘ってきた。 「今日…少しいいかな」 東儀は俺と一瞬目線を合わせた後すぐにそっぽを向く。 僅かだが頬に赤みが差し、若干緊張しているように見える。 「何か用?」 「ちょっとだけ…付き合って欲しいんだけど…」 一緒にどこかに行って欲しいのか、それとも話を聞いて欲しいのか…。 奥ゆかしく俺にお伺いをたてる姿は男とはいえ可愛らしい。 「今日はこの後予定も無いし、ゆっくり付き合うよ」 「…ありがとう」 東儀がはにかみながら微笑んだ。

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