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第16話

ちょっと強引だったような気もするが、一応 “すき” と言ってくれた。 ·····若干の無理矢理感は否めない…かな。 好きだと言われると自分自身を認めてもらえたような気になって思い出すと顔がほころぶ。 承認欲求というのか、ヤツには俺を特別扱いして欲しいと思った。 でも来週から夏休み。 このままではフェードアウトする可能性大…。 俺は東儀と会う口実を必死に考えた。 終業式、明日から長期の休みに入るというのに席替えが行われ東儀とは席が離れてしまった。 俺は廊下側、東儀は窓側。 「ついてないなぁ」 心の声がうっかり口から出た。 「何がついてないの?」 俺の顔を覗き込んできたこの男…誰だっけ? 「えっと…」 「桜井晴海」 「ああ、桜井…」 小柄で可愛らしい顔をしている。 「やっぱり僕の名前知らなかったんだ」 あはは、と屈託なく笑う姿に好感を持った。 「都丸君とお近づきになれて光栄だよ」 「え、そんな風に思われてるの?俺?」 桜井は、ふふ内緒、と尖らせた口の前に人差し指を立てた。 人懐こい笑顔。 こんな風に話すヤツだったのか、知らなかった。 ホームルームが終わり東儀と下校する。 「もう夏休みかぁ」 「都丸は出かける予定はあるの?」 ·····家族揃って旅行ってのもないし… 「何もないよ。毎日暇してる」 「じゃあ会おうよ」 願ってもない! ·····と思っても微塵も顔には出さない。 緩む頬に力を入れて、デレる顔なんて、見せない。 「東儀こそ、旅行とかいかないのか?」 「そういうの、無いんだ」 ふと、視線を外してそう言った東儀の表情がちょっとだけ引っ掛かった。 だが、俺には好都合。 東儀の横顔を目で追った。

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