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第17話

夏休み初日、早速宿題に手をつける。 面倒なものはさっさと終わらせるに限るから。 昨日の別れ際、東儀から嬉しすぎるお誘いがあった。 夏休み中のお出掛け(デート)は想定内として…東儀宅に泊まりに来ないか、と誘われたのだ。 名目は宿題を教え合う…とか。 それっぽいが、もちろん俺的にはそれだけではない…。 二人で存分にいちゃいちゃ過ごせるチャンスだ! 8月の頭には花火大会があるから一緒に行ってそのまま泊まろうか。 こんなに浮かれた夏休みは初めてだ。 ひとしきり勉強した後ウキウキ気分が はみ出たまま、俺は必要な物を買い揃えるために出掛けることにした。 駅前の薬局で歯ブラシやらナニやら買い込んだ。 レジ袋をぶら下げて薬局から出てくると、黒塗りの車が目についた。 一目で高級だとわかる、この場所には不釣り合いなそれは信号が青に変わると滑かに走り出した。 後部座席に東儀を乗せて。 …!? アイツ、何者? その疑問は花火大会当日に解消した。 東儀の家で待ち合わせをしてから河川敷に行こうという段取りになっていたが、実家にある浴衣を着て行こうと言い出し、取りに行ったのだ。 黒塗りの車で。 「お前んち、何やってんの?」 「うち?医者だよ」 あーなるほど。 そりゃ独り暮らし出来るし移動は車だ。 「継ぐの?」 俺の問い掛けに、どうだろう、と答えた。 10分程走って大きな家の前に停車した。 違うな。 大きな門の前、に車が止まった。 門は電動で開き、庭には松やら何やら木が植わっている。 少し歩くと家の全体像が見え、やたらと大きなお屋敷が出現した。 玄関、廊下を通り子供部屋で暫し待った。 ガチャリと扉が開き反射的に顔を上げるとそこに知らない顔が…。 東儀と似てる…お兄さん? 「一心の学校の子?」 「…東儀くんのクラスメイトで都丸誠司といいます」 俺が名乗ると口に手を当てて肩が揺れている。 わっ、大丈夫か?この人? 肩の震えは収まらない。 「どうかしましたか?」 慌てて駆け寄ると、 「ぶふっ、くっくっくっ」 と爆笑していた…。 「だって…とまる、せいし、って…」 えっ?俺の名前? 「名字も名前も止まる前提って…くっくっくっ…」 …その時の俺はきっと目が点になっていたと思う。

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