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第33話
「そろそろ戻らないと」
「…うん」
東儀は平然と言い放った。
そう、絡んできた大学生はとっくに逃げていた。
…どんな視線飛ばしてんだよ…。
「都丸、行こ」
·····ギュン!
急にこちらに振り向いたかと思えば可愛く微笑んで、胸がドキドキする。
「ああ」
きっとコスプレして店の宣伝してるの思い出したんだ。
否応なしに周囲の視線を意識しながら東儀の手を取った。
さっきまでとは違う意味で注目されている。
俺達はあちらこちらの出店に顔を出しながら、さりげなくクラスの模擬店のちらしを渡した。
「ちらし配りが終わったからそろそろ戻るか」
「俺、ちょっと寄りたい所があるから先に行っててよ」
「了解」
別れて一人廊下を歩く。
クラスに向かう杜仲、東儀に絡んでいたチャラ男が似たような男達とヒソヒソ話し込んでいる姿を見た。
感じ悪ぃ…。
脇を通り抜ける時、『セーラー』という単語が耳に入ってきた。
セーラー…東儀のことだろうか?
だとしたら、根に持ってんなぁ…。
東儀はどこかに寄ってくるみたいだけど…。
…まあ校内なら大丈夫か。
「都丸~東儀は?」
桜井がバックヤードにいたオレに声をかけた。
「まだ帰ってない?」
おかしい、あれから20分は過ぎてる。
「その辺見てくるよ」
別れた場所まで戻った。
こんな所にいるわけないか…。
…まさか…あいつらに…。
人気のない場所は……体育館の裏手にある倉庫…。
人気がなくてシメるのには都合がいい。
もしかしたら…でも……
最悪の事態が頭をよぎり、俺は倉庫に急いだ。
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