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第41話

学校が楽しいせいか、以前より時が過ぎるのを早く感じる。 この特進クラスは二年になってもメンバーは殆ど変わらない。 半分以上が付属の大学に進学するこのクラスで俺、東儀、桜井はトップスリーだ。 「東儀は医学部に進むんでしょ?」 昼休み、弁当のサンドイッチを頬張りながら桜井が東儀に話しかけている。 「ま…一応ね…」 「桜井は…何で知ってるんだ?」 二人の目が点になった。 「何でって…東儀の家、お医者さんでしょ?僕も看てもらったことあるよ」 ああそうか、周知の事実なのか。 自分だけが知っているのではない、皆が知っているという事に少し気持ちが落ちた。 「…それで、桜井の弟くんはどうするって?」 「また、ここに通いたいって言ってたから…受験するんじゃないかな?」 「うちの兄貴もね……」 桜井、弟がいたのか。 東儀と桜井が楽しそうに兄弟の話をしている。 俺は…俺には…二人の会話が耳を素通りする。 「都丸、予鈴鳴ったよ」 東儀の声にはっとした。 ぼんやりしてた…。 二人の話す世界に入っていけない。 東儀とクラスメイトとのやり取りを見るだけで気持ちがささくれる。 独占欲だとわかっているが…桜井とのやり取りを見ていられない…。 心にモヤモヤとしたモノを抱えたまま一学期を終えて夏休みになった。 進学校らしく休みの間に補習がいくつも入り、夏休み前とあまり変わらない学習量だ。 それでも東儀と同じ空間にいられるのが嬉しい。 今年も夏休みの間、補習を盾に東儀の部屋に入り浸った。 たまには帰れよ、と口先で言われるが東儀だってまんざらでもない様子だ。 このまま時が止まればいいのに…今までの俺なら有り得ないような、そんな考えが頭を過り思わず笑ってしまった。

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