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第42話
二学期恒例、文化祭まであと二週間を切った。
俺は猛烈に忙しい日々を過ごしていた。
文化祭の準備の為に早朝から登校し、遅い時間まで関係各所との調整やタイムテーブル作成などフルで働いた。
季節は秋。
暑すぎた夏と違い秋になり随分過ごしやすい季節になっていた。
…否、朝晩が去年より格段に寒い。
寒暖差が激しくなった月曜日、オーバーワークだった俺は体調が悪いながらも気力で登校した。
…体がおかしい…。
熱っぽくて…皮膚が痛いような…
…そしてとても眠い。
「都丸、具合悪いんじゃない?」
席に付いたとたん東儀が心配そうな顔をしてみせた。
「…風邪気味?かなぁ…」
反射的に言葉を返すと後頭部に手を当てられ引き寄せられた。
コツン、とおでこ同士が当たる…。
何コレ…?子供扱い?
ふっと心が緩んだ。
「凄く熱が高い…保健室にいく?それとも、もう帰る?」
「…今来たばかりだろ…」
しゃべる声に力が入らない…。
あーまずい。
寒気と共に世界が回る…。
「都丸!」
遠くで一心が俺を呼んでる…。
白い空間
消毒薬の匂い
皺の一筋もないシーツ
…ここは何処?
腕に点滴の針が刺さっているから病院だろうけど…。
ぼ~っと白い天井を目に映していたらノックの音と共に看護師が入ってきた。
「気がつきました?都丸さん?」
男性の看護師か…。
黙って目だけを動かした。
「インフルエンザに罹ってました。辛かったですね」
そうか…インフル…。
「運ばれて来たときは40度を越える発熱がありましたけど…うん、だいぶ下がったみたい」
俺の額に手を当て、ざっくりと体温を計った。
「あの…ここは?」
「東儀記念病院です。私は看護師の菊池といいます」
東儀…記念病院…ってことは…。
「一心さんのクラスメイトと伺ってます」
「…そう…です…」
「何かありましたらナースコールでお呼び下さい」
菊池さんは柔らかく微笑み、会釈して出ていった。
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