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第43話

どのくらい時間が過ぎたのか…。 目を覚ますと日が傾き始めていた。 「誠司さん、具合はどうですか?」 ·····誰も付いていないと思っていたのに…。 ベッドの脇に置かれた椅子に男が座っていた。 「松本…いたのか…」 「先程から。学校から連絡がきましたので」 …だよな…。 松本忠彦 35才、背が高くガッチリとした体躯の持ち主で親父の秘書。 「もう平気だから帰れよ」 「そうします。あ、着替えなどはクローゼットに入れておきました」 そう言って立ち上がり個室に作り付けられているクローゼットを指した。 「わかった」 「では…」 松本は黒革の鞄を携えて病室の出口に向かい、戸を引き開けたが、病室を出る直前で顔をこちらに向けた。 「私はこれで失礼しますが…あんまり無理するとお母様が心配なさいますよ」 「…」 「では」 余計な一言を残し、松本は病室から出て行った。 母親が心配?する訳ない。 俺の本当の母親じゃない。 親父の後妻。 俺と一回り程しか違わない。 「クソ親父め」 イライラする。 体は怠いし点滴の管は煩わしい。 熱が幾分下がったとはいえ節々は痛い。 暮れていく空を見ていたくもないが起き上がってブラインドを下ろす気にもならない。 ただベッドで眠るだけなんて…。 嫌な事を思い出す。

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