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第45話

朝からだだ下がりのモチベーションを上げることが出来ずに迎えた放課後。 文化祭の準備に追われ、忙しく動き回る東儀と桜井の姿が目に映りこんだ。 ずっと二人で楽しそうにしている姿がやけに目に付く。 周りは体調が万全ではない、と解釈したらしく誰もあれこれ話し掛けて来ることはなかった。 ·····東儀からも軽く放置されている…。 授業なんて全く頭に入ってこないし気づけば東儀を目で追ってる自分がいるし…。 「何やってんだろ…帰ろ」 席を立って荷物を持ち、未だふらつく体で教室を出た。 俺が帰る姿を見て、何人かクラスメイトが声を掛けてきたが…ああ、うん…と曖昧な返事をして廊下を急いだ。 …早く帰りたい。 …ここを出たい。 校舎を出て、足を早める。 焦ったせいかふらつく体が傾いた。 しまった…倒れる…! 目を閉じて倒れるのを覚悟した… …のに… 俺の体は後ろから支えられて地面に倒れ込むことは無かった。 「王子様かよ…」 軽く毒づく。 「セーフ?」 こっちを見てくる東儀に、今 顔を見られたらヤバい。 笑顔で助けに来るなんて、少女マンガか! 「セーフだ!」 赤らんだ顔を見られたくなくて乱暴に言い捨ててしまったが…ささくれた気持ちが少し楽になった。 「…もっと早く来いよ」 「待たせて悪かったな」 さりげなく俺の鞄を持って笑ってそんな言葉が言える…。 懐が深すぎるだろ…一心…。

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