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第48話

モヤモヤした気持ちのまま迎えた文化祭当日。 俺は喫茶店と化した教室の様子を見守りながら裏方でコーヒーを淹れていた。 「コーヒーの淹れ方も板についてきたね」 リスがドングリ形のトレイで顔を扇ぎながら俺に話しかけてきた。 「サンキュ。まぁ、お湯注ぐだけだけどね」 「良い匂い~」 「それより暑いだろ?アイスコーヒー飲めよ」 今年は『どうぶつ達の森・着ぐるみカフェ』なるものをやっている。 桜井はリス…似合うな…。 「十月なんてまだまだ暑いのに死んじゃうよ」 桜井に砂糖とミルクたっぷりのアイスコーヒーを渡すと美味そうにぐいっっとイッキ飲みした。 「はー、ウマイ!もう少し頑張ってくる!」 リスは大きな尻尾を引きずって注文待ちのテーブルで笑顔を振り撒き始めた。 「あれ?東儀は…?」 さっきまで給仕してたのに…しまった!見失った。 「ちょっと、コレ…」 コーヒーはその辺にいたクラスのヤツに任せて、俺は廊下に飛び出した。 「また変な奴らに遭ってないだろうな」 廊下の突き当たり、美術部が展示に使っている教室の前に見覚えのある尻尾。 ふさふさなそれは東儀の腰あたりから生えているのだが今はぶんぶん振り回されている。 人を掻き分け、俺は東儀の元に急いだ。

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