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第52話

気持ちを切り替えて、文化祭二日目。 今日もコーヒーを淹れる裏方の俺…。 つい立ての向こうで東儀と桜井が着ぐるみを着たまま戯れている。 猫とリス。 隙間から垣間見える二人は尻尾をぐるぐると振り回し、珍しく東儀がはしゃいでる。 尻尾が取れちゃうなんて言って桜井だって楽しそうだ。 「都丸!溢れてる!」 「えっ?あぁ〜、ゴメン」 「ま、ガンバレ」 柴田に渡された布巾で机の上と茶器の底を拭く。 んん?ガンバレ?何を? 言われた言葉の意味を理解しかねる。 だが俺の肩をポンと叩いて柴田は教室を出ていった。 寡黙で頭が良くて教室にほとんどいないクラスメイト。 理科室の主と囁かれている。 柴田とは今日まで話したことがなかった。 ま、話した事がない奴だらけだが。 「いらっしゃいませだにゃ〜」 東儀猫の声が聞こえ、客が来店したようだ。 気合いを入れて今日もやるか。 二日目の午後、接客や給仕にも慣れイージーモード。 客も減ってきて俺は一人で校内をふらついていた。 東儀は着替えがあるから後で合流することになっている。 もともと周りに興味が向かな質故、いつの間にか最果ての理科室にたどり着いていた。 そっと中を覗くと保護者らしき人がちらほら…。 「ま、こんな感じか。ん?」 理科室の主、柴田がいないな。 クラスの方にもいなかったからここだと思ったけど…準備室か? そっと準備室に続く扉の小窓を覗くと、こちらに背を向けた黒い頭が下の方に見えた。 何の気なしに扉を開けると、その頭が振り返った。 「あっ…し〜っ」 口の前に指を立てた男子の膝枕で柴田が眠っているようだった。

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