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第70話

ちょっとこの席順、おかしくないか? 何となく流れで座ったボックス席で、俺は軽く不満を持った。 窓際の奥に東儀が座りその隣に下遠、下遠の正面に俺、俺の隣に佐久間で奴は東儀と向かい合って窓際だ。 普通付き合ってる奴や付き合いたい奴と隣、もしくは正面に座るんじゃないの? 下遠もなんか言えよ。 俺が正面にいて一心が隣じゃ大好きな佐久間の顔が遠いだろ? だが不服に思っているのは俺だけのようで、三人は和やかに話をしていた。 「…生理学がね、面白かったんだよ」 「あの教授は人気があって…」 「…次の実習は…」 …そっか、俺だけなんだ文系は。 共通講義なんて一つも無い。 …疎外感… 子供の頃には感じたことの無いこの気持ち。 一心と出会って初めて知った。 たった三年で俺の中の常識、全ての物が作り変えられてしまったようなそんな気がする。 嬉しいような何とも複雑な心境だ。 「誠司は何にする?」 さっきまで喋っていたのに、今はメニューを見てあれこれ言ってる。 早えな。 「コーヒーとフレンチフライで」 「うわっ」 「その組み合わせって合ってる?」 「何でコーヒーにポテト?」 佐久間、一心、下遠が示し合わせたように俺を否定する。 「いいだろ!ほら、次の奴は何にするんだ?」 「パフェと抹茶アイス」 「僕はイチゴパフェとたこ焼き」 「俺腹減ってるんでチャーハンとラーメンライス」 「佐久間は甘い物食べ過ぎ、一心は人の事言えない組み合わせだろ。下遠は炭水化物重ねすぎ!」 へへん、どうだ。 言われた分言ってやったぜ。 「細かい…」 「誠司お母さんみたい」 「育ち盛りなんです!」 うっわ…一斉に返ってきた。 でも、何だか楽しい。

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