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第72話

※ここから下遠目線 「佐久間は…歩く姿が颯爽としてカッコ良くて…顔はもちろん…凄く綺麗だろ?それからいつも一人なんだけどそれも絵になるっていうか…だからといって冷たい訳でもなく、話し掛けられたら丁寧に応えてるし…ふとした時に見せる笑顔も控えめで好感…って!これ何の罰?」 今思いつく限り、胸の中に溜まっていた佐久間への好意を語ってしまった。 「うわ…引くほどだね…」 「愛されてるな、佐久間…」 都丸には辛辣に評され、東儀には揶揄われ、佐久間に至ってはイメージとまるで違う見たことも無い顔をされた。 「何だよ顔真っ赤じゃん」 「下遠くんは佐久間くんの事大好きなんだね」 東儀がそう言うと佐久間はガタンと椅子を鳴らして勢いよく立ち上がった。 「俺、帰る」 「え?」 しまった! 佐久間は財布からお金を取り出しテーブルに投げると、一目散に店の出口へと向かった。 「待って…」 俺は慌ててその後を追う。 佐久間の背中を追いながら、調子に乗ってアレコレ言ったことを後悔した。 「佐久間…!待ってくれよ!」 運動が得意ではないのが祟ってみるみる佐久間は遠くなる。 「佐久間…あっ!」 赤信号で立ち止まっていた佐久間は俺が倒れて声を上げるとすぐにこっちに戻って来た。 「大丈夫か?」 「…逃げたんじゃないのかよ」 佐久間は腕を掴み俺を引き上げた。 「そんな足で走るから…」 「…知って…」 「見てりゃわかる」 ただの事実なのに、俺は酷く悲しい気持ちになってしまった。

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