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第82話

※ここから下遠目線 「あー…よいしょっと…」 俺に凭れていた体を起こし、急によそよそしい態度に変わる佐久間。 「それじゃ」 そしてジャケットのポケットに手を突っ込んだまま、オレに背を向けた。 「え!待って!」 声は聞こえているはずなのに振り向きもしない。 カバンを担ぎ直して慌てて佐久間の後を追った。 「何か用?」 振り向いた佐久間は大人びたクールな顔でそう言った。 「よう…って…」 え? 冷たくない? 俺達付き合いたてのカップルじゃないの? 「一緒に…お茶とか…」 「昨日しただろ?」 あ…したね… 「…それじゃあ…佐久間の部屋に…」 「昨日来ただろ?」 …うん、行った… そしたら… 「…じゃあ…何する?」 とにかく佐久間と一緒にいたくて理由を考えて出たのがコレ。 「くっくっ…」 半分噛み殺したような笑い…。 「面白いな…お前…」 クールに見えた表情が緩んで目尻にたくさんの笑い皺が見える。 これこれ。 こっちの方が年相応。 「お前じゃない、下遠だよ」 「下遠…なんて言うの?」 「大輔」 「固いな…」 「え…?」 「赤くなってんじゃねぇよ。俺は京乃(きょうの)。またウチに来る?」 さっきまでの冷たい顔じゃなく、友達っぽい顔。 「い…行く…。え、京乃待ってよ」 言うだけ言って、俺を置き去りにする…。 佐久間はもう階段を降り始め、頭が少し見えるだけ。 俺は走って佐久間の後を追いかけた。

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