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2.狂歯車②
小屋の入口辺りでそわそわしていた星月はやがてその中に入っていく。その時、一瞬だけ垣間見えた表情は酷く蕩 けていた。あまり小屋に近づきすぎては雨月が後を尾けている事が星月に気付かれる。そうなったら最悪、星月は彼を避けるようになるかもしれない。
そう考えると、雨月は他と比べて己が妖術にも長けていて良かったと思った。
そして呪 いを宿した手でそっと片目を隠し、小屋の中を覗き見る。意外な事に小屋には何の術もなく、手で隠された雨月の目はするりと小屋の中の光景を映し出した。
「……!!!!」
その光景はいっそ夢か幻だったならばどんなに良かったと思っただろうか。今までに無いほど見開かれた雨月の目に映る光景は驚愕と混乱となるが、やがて時を待たずして激甚 の憎悪に変わる。
頭に上った血はもしかしたら地獄の釜で煮立てた金属よりも熱かったかもしれない。燃え盛る炎のように激憤し、体が動くままに雨月は小屋の扉を切り伏せて中に入った。
そこでは雨月が中を呪いで覗き見た通り、 星月が普段は絶対見せることの無い蕩けた顔で腰を振っていた。しかしそれは男としてではなく、まるで性処理を任せられた小姓のように別の男に跨がっている。小屋に押し入る形となった雨月から見えた星月の後ろ姿は、酷く熟 れてその歳には不釣り合いなほどの色香を放っていた。
本来ならば出すためだけに使われる臀部の奥に隠されているはずの蕾は、桃色の蕾が肉の杭を飲み込む律動に合わせて開花を繰り返している。星月が動く度に花を咲かせる蕾は、まだまだ足りないといわんばかりに淫靡でトロリとした蜜を吐き出す。
自らの蕾に他の男の肉杭を打ち込み、快楽を表すように蜜を溢れさせ、甘く震えた声で鳴いていた星月が第三者の乱入でその動きを緩めてゆっくりと振り向いた。
雨月に見せた星月の表情は色香に濡れてはいたが、ただただ無邪気な子供のような無垢さと、見たもの全てを狂わせてしまう危険な遊女が持つ艶 かしさのような二つが同居している。
「うづきだぁ…」
「ぼっ…ちゃん…」
熱に浮かされたような猫なで声で呼ばれて雨月の目からは涙が零れる。その様を見ながら星月は再び自らの蕾に杭を打ち込み始めた。再び水に濡れた肌同士を打ち鳴らす音と粘液が空気を含む淫らな音が小屋の中に響き渡った。
「ぁ、ぁッ…はぅ、ん…ぅ、うづ、うづきぃ…うづき、も…」
甘い矯声で鳴きながら星月は言葉を紡ぎ、それを聞いた雨月の涙に濡れた目は見開かれた。
あそぼ?
続いた言葉は雨月の目の前を真っ赤に染めるには十分な一言だった。
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