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8.欲を画いて
無邪気に笑う星月はそのまま明るい声で残酷に告げる。
「なら、これは命令だよ雨月!僕と交合 って?」
命令と言われると他に仕える事に慣れた頭ですぐには断れず、雨月は言葉に詰まってしまう。そんな雨月の隙を見て、星月は鍛えられた体の中心に座するまだ柔 くとも立派なそれをその小さな口に咥え込んだ。
「坊っちゃん!!」
星月のいきなりの行動に雨月の非難する声が行動を咎める。しかし、とろりと蕩 けた瞳の星月はその行動を止める気配もない。小さな口は己の唾液で杭が濡れるように咥え込める所まで迎え入れる。そして軸から先端へ向けて舐 り上げ、その先を柔らかく幼い舌でぐりぐりと刺激し、そして吸い付きながら喉の奥までぬるぬると含んだ。
しかし、並の者ならばすぐに体の中心に固い塔を起立させるような口淫でねっとりと舐 るそれらを続けられても、雨月は僅かにも星月の望む形にはならずに柔らかくしなっていた。
「なんで?雨月…どうして…?」
「坊っちゃん…あては戦とそれに対する殲滅こそが本質ですえ。性欲なぞほぼあらしまへん。坊っちゃん相手ならなおさらですわ。お館様には黙っておきますゆえに、やめなはれ」
予想外の雨月の言葉に頬を膨らませた星月だったが、術を解く事も口淫もやめようとはしない。
「坊っちゃん」
咎める雨月の声に星月は悔しそうに口を離すが、パチリと互いの視線が交差すると何かを思い出したようにハッとした。
そしておもむろに星月は自分の中指を口に含む。プツリという音に続いて一瞬だけ顔を歪めた星月だが、その直後には何事も無かったかのように口に含んでいた指を引き抜いた。とろりとした唾液の尾を引いて出てきた華奢な指先からは僅かな血が出ている。
「坊っちゃん…?何を…?」
「えへへ」
雨月の問いに答えず、たらりと指先を伝う血を見た星月は小さく笑ってそれを迷う事無く雨月の下腹部に這わせた。動きを止められている雨月からははっきりとは見えないが、触れる星月の指の動きを感覚で辿ると何かを書いているようである。血と唾液で濡れた星月の指が少しの間何かを求めるかのように雨月の腹を這う。それは僅かな時間だったが、星月が指を離した時に満足そうに笑った。
「できた。できたできた!これで…」
星月が己の指を這わせていた場所に手を置いて大事そうに触れると、雨月は目を見開く。星月の手が置かれた場所からじんわりと生まれた熱が体の中に散って、そしてまた戻ってくるのを繰り返す。じわじわと高くなる熱のそれはやがて形となった。
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