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第3話*貧しい集落*

ここに小さな集落がある。 山を切り開き乾いた土地で、やっと出来る農作物を売りに行き乾物と交換してくるような、貧しい集落だ。 そしてここには変わった風習がある。 一夫多妻制だ。 いくら何でもこの時代にと思うのだが、この集落には若い青年がいない。 家のために出稼ぎに行っているのではなく、本当にいないのだ。 最大の禁忌のため、このことは誰も口にしない。 だから俺も父親が誰か知らないし、弟や妹とも違うかもしれない。 きっと母親に聞いても貝のように口をつぐむだろう。 このような恵まれていないこの土地は雨が何より大切だ。 雨が降らないとたちまちここは干上がるだろう。まさに雨が命の水だ。そういえば、今年はまだ雨が降っていないな・・。 そう思いながら乾いた土地を鍬で耕す。そんな日々の中、来客はいきなりやってきた。夕餉が終わり、小さな弟と妹が寝入ったころだった。 『あ、作造さん達だ』 振り返ると母の顔に血の気は全くなかった。 「タキさん。ちょっとトキワと話をさせてもらいたいんだが・・・」  すると母は俺を抱きしめ、 「お願いです。待ってください。見ての通りトキワはまだほんの子供です」 「お努めが果たせるとは到底思いません。どうかご容赦ください」 「タキさんわかってくれ、今ここで年が合うのがトキワしかいない。このまま雨が降らないとどうなるかわかるだろう?」 「決めたわけじゃない。話を聞いてもらうだけだ。トキワ。すまんがちょっと来てくれんか?」  よく話もつかめないまま作造さん達に着いていこうとすると、母はその場で大きく泣き崩れ、喉がつぶれるまで泣き続けているようだった。

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