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第6話*守れない約束*
寄り合い所から家に戻ると母さんが立っていた。
そして俺を見るなり思いきり抱き締める。
『人のこと言えないけど母さんもずいぶん細い。
雨が降れば少しは体力着くかな?』
「トキワ、トキワ・・」
もう母は泣きながら俺の名前を呼ぶことしかできなかった。
「母さん」
はっと、俺の目を見る。
「三日間思いきり母さんの料理が食いたいな」
「三日?三日しかないの?」
俺を抱きしめていた母さんはずるずると膝を落とした。
食料なんてほとんどないはずなのに母さんは俺のために毎日たくさんの食事を並べた。
きっと作造さん達が集めたんだ。
正直、感傷に浸る間もなく三日なんてあっという間に過ぎる。
「おーい。ちび共」
「なあにー。お兄ー」
まだ年端もいかない弟と妹が駆け寄ってくる。
「あのな、兄ちゃんお外で働くことになったんだ。だから二人でしっかりお母さんを守ってあげるんだぞ?」
「うん!わかった」
「いつかえってくるの?」
「うーん。いい子にしていたらね」
「じゃあ母さん、寄り合い所で着替えるらしいから、いくね。いつまでも元気でいてね。今まで育ててくれてありがとう」
「トキワ!」
走り出して母さんは俺を抱きしめる。
「トキワ!トキワ!ごめんね。ごめんね」
俺は母さんの背中をポンポンと叩き、
「きりがないよ母さん。作造さん達が待ってる」
母さんたちに笑顔で手を振り玄関の戸を静かに引く。
その途端、頬に熱いものが伝う。
さよなら。僕の愛する人たち。もう二度と会えない人たち。
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