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第12話*最後の晩餐*
「キヨ、これを」
シマの声がする。
「はい。わかりましたでございます」
風呂を出て体をガシガシ拭かれている時に目をやると、白い着物があった。
袖を通されたらすべすべした薄いはおり物のようなものだった。
(あとで絹ってヤツだと聞いた)廊下の先にはシマがいた。キヨが帰っていく。
やっぱ、身分みたいなものがあるのかなあ。あの人達。広間に戻ると狐の寝椅子の前に膳があり、食事が用意してあった。
「食え。あまりにも骨だけだとこちらも興ざめだ」
すとんと座り、膳を見る。香の物、汁物、ほとんど見ることのない焼き魚、
そして湯気の立つ白米・・。
『なんだろうこのご馳走。最後の夜だから出してくれたのかな。白米・・。弟や妹は見たこともない。こんなに温かくて柔らかいものを二人にも食べさせてあげたい・・』
気づいたら涙が止めどなくあふれてきた。
「泣くのをやめろ。興が冷める。そうしたらどうなるかわかるな?」
俺は涙をぬぐい、一生懸命夕餉を頬張った。家族のため、集落のため、俺は遊びにきたんじゃない。
白米は柔らかさを感じなくて砂のように時々喉に張り付いた。
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