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第13話*初夜と別れ*

お膳をずらし、 「ありがとうございました。ご馳走を頂きました」 深々と頭を下げる。 「こっちへ来い」 『ああ・・きた』 俺が狐に近づくとあごをがっしり掴まれた。ぎゅっと目を閉じる。 「ふっ正直な体だな。体中に力が入って震えている。キヨに何回洗われた? ずいぶんと泥が落とされたな」 頭を傾けられて髪が揺れる。 「そしてこの流れるような黒髪。ん、瞳の色が下の者と違うな?」 「・・は、はい。この色は生まれつきだそうです。でも手間のかかることなく、畑仕事もこなせるので皆は何も言いません」 「すみれ色だな。そして言葉遣いもなかなか良い」 「さあ、花嫁殿。今宵はどこをご所望かな?」 『選べる場所なんてどこにもないくせにっ』 「ご、ご寝所に招いていただけると・・」 「くっくっくっ」 狐はなぜか笑いながら、軽々と俺を抱きかかえ寝所に俺を横たえた。 『さよなら・・みんな・・』

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