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第16話*望んでいたもの*

「贄嫁様、お館様がお呼びです」  心臓がキュッとなったがシマについていくと大きな窓のある部屋に通された。狐もいた。 「ふむ。わりと色味のいいものを選んだつもりだが少しお前には柄と年頃があっていないな・・。まあ、よい。こっちへ来い」  びくびくと近づく。 「ふ、喰わんから来い」  狐に近づいて窓の外を見ると 「雨だ!雨が降っている!雨が・・・」  涙が頬を伝う。 「ありがとうございます。ありがとうございます」  思わず笑顔がこぼれる。これで皆が助かる。 「俺は嘘はつかぬ」 『これで俺の役目は終わったんだ』 「童っぱ。名はなんという」 「ト、トキワと申します」 「ふむ。トキワ、昨日の口吸いは覚えているな?」 「は、はい・・」  俺は大きく口を開けた。 「くっくっくっ。口は開けずとも好い。唇の力を抜き、歯を少し開けてみろ」  なんかよくわからないけど、口を半開きにしてみた。 「うむ。まだまだだが時間をかけるか。それにしてもお前は紅を引いているようだ。男児とは思えん」  そういうと狐は昨夜のように俺の口に舌を入れてきた。俺の腕を肩に置いたので、思い出して首に腕を回した。 『何の時間をかけるんだろう』  大きい狐は腰を曲げて背の丈を合わせてきた。 「ん・・んん・・ふっ・・ん・・」  何か体が熱くなる・・。

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