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第23話*シマとキヨ*

「シマ様。キヨでございます」 「入りなさい」 その部屋は簡素で布団を二枚もひけば埋まってしまうような広さだった。 「トキワ、体調を崩したんですかい」 シマが額の布を変えているのを見ながらキヨが尋ねる。シマが深くため息をついて、 「上掛けを静かに上げてみなさい」 キヨは言われた通りトキワにかかっている薄めの布をずらした。 「あらー」 「お館様が少し無体を働きました。トキワはもう二日を覚ましていません」 「薬入りの白湯を与えているので体調に心配はありませんが」 「いきなりでは痛みと恐怖があったでしょうに」 キヨもため息をつく。 「体全体がすいぶんと熱を持ってますし、こまめに全身の熱を取りましょう」 「それで、お館様は」 キヨが訊ねる。 「トキワが意識をなくしてからお隠れになっています。ですが常に見守っているのでしょう。この部屋の空気は澄んでいる」 「お館様がトキワのような童に会うことなど、まずありません。きっと扱い方の加減が分からなかったのでしょう」 「ではまたトキワが目を覚ましたら前回のように?」 「・・・・」 「シマ様?」 「お館様の御心は決まっているように思います」 「まあ」 「選ぶのはトキワです・・・・」 トキワは十日間目を覚まさなかった。

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