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第24話*キヨの場合*
『ん・・ここは・・?ご寝所じゃないな。でも俺喰われたんだよね。
でも何か体が動く・・』
もぞもぞとしているとキヨが気づき、
「あっトキワ起きたかい。体の具合はどうだい?今ぬるめの風呂を用意するからね」
「え、風呂。どこ、この部屋?」
トキワはかなり混乱していた。
「トキワ、一人で歩けるかい?」
風呂の準備を終わらせたキヨが大きく声をかける。
「え、一人で」
起き上がろうとしたトキワはバランスを崩し、キヨに支えられた。
「あれ?」
「仕方ないさ。十日も寝ていたんだ」
「え、十日も寝ていたの、俺」
「じゃあ童とは手を繋いでいこうかねえ」
「ねえキヨ、なんか変なんだけど」
「まあ、風呂で話そうや」
風呂はたしかにいつもより少しぬるめだった。でも寝続けて体力の落ちているトキワには
心地よかった。キヨは丁寧に俺の体を洗う。
「ここの痛みはだいぶ平気かい?風呂のたびにこうして手で優しく洗って、そうそう大丈夫みたいだね」」
「あっ!・・ねえキヨこれどういう事?」
「大人になっていく証さ。本当は体の成長に合わせて自然になるもんだ。ただお館様はあんたみたいな童に会う事なんかないからねえ。勝手がわからなかっただけなのさ。トキワが寝込んでいる間も姿を見せずにずっと見守っていたよ。だから痛みもだいぶないはず。
お館様はトキワを大事にしたいだけなのさ」
『贄嫁なのに?見守ってたの?大事にするの?』
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