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第42話*突然の別れ*
『俺、何すればいいんだろ』
ここ数日トキワはそればかり考えていた。
『うーん・・』
ふと窓の外を見て愕然とした。
『え?』
それは、集落の皆が大きな荷物を抱えて移動している姿だった。
『あ、移動してる?もしかしてお坊さんの説得がうまくいったのかな?
皆新しい場所に行くんだね。母さんも、弟も妹も、作造さん達も。皆あの集落からいなくなるんだ。村にいた「トキワ」もいなくなるんだ。
あそこはもう空っぽの世界。
これで本当に俺の居場所がなくなったんだ・・』
「・・おやかたさま」頬を熱いものが伝う。
「・・おやかたさま」打掛を握りしめる。
「おやかたさまあ!!」
狐はすぐに姿を現した。
「どうしたトキワ?何故泣いている」
なにも言葉を出さずトキワは叫ぶように泣いていた。
狐がふと外を見る。
トキワは狐にしがみつき、ひたすら大声で泣き続けていた。
狐はトキワを優しく抱きしめた後、
「トキワ。泣きすぎはお前の体にも、俺の心にもよくない」
そう言って指でコツンとトキワの額をつついた。トキワの体は糸の切れた
人形のようにカクンと狐の腕の中に落ちた。
狐はトキワを優しく抱き上げ寝所に向かった。
「トキワ。辛いことだが、いつかはわかっていた事だろう?」
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