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第54話*口吸いの夜*

もそもそと布団に入る。すると目の前に狐の顔がある。気まずい。 ものすごく気まずい。 「すみれ?今迄みたいに尻尾を抱えてよいのだぞ」 「大丈夫です。布団で眠れます」 「なあ、すみれ。お前の唇に触れたい。今までずっとそばで見てきたのに、俺は触っていない。ずっと見てきたのだ、触りたいのは当然であろう」 『でた!これ断れない感じのやつだ』 すみれは布団から出て狐を起こす。 狐の胡坐に近づき、両の頬をなでる。狐の口に近づこうとしたその瞬間、 狐に舌を奪われる。 「あ・・ふう・・んんっ」 『舌がとれちゃうよ力が強い』 「ん・・ああっ・・」 「すみれ?」 「いつもと何か変なんです。お館様と口吸いすると、体がすごく熱くなる。 お館様と体温が違うのでしょうか?」 「それだけではないかもしれぬぞ」 「あっ」 また激しく舌が絡んでくる。 『ん・・やっぱり熱い・・』 「ん・・ふ・・はうん・・」  狐が力を緩めてもすみれは強く狐に抱きついたまま離さなかった。

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