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第58話*お館様の着物*
『あつい・・』
『何か力が入らない』
「大丈夫か?すみれ」
「お、やかたさま・・」
狐が汗で額にはりついた髪の毛をそっとなでる。
「汗をかいたな。拭いてやろう」
「・・はい」
狐は丁寧に額や首元、腕とすみれの汗をぬぐった。意識薄く様子を見ていたが、
「あ、お館様着物が汚れています。俺のせいですか?」
「なあに。着物なぞ山のようにある。これはすみれが俺を好いている証拠だ」
『ええ?や、嫌いではないけれども、好きって・・う―ん。まだそんなのわからないなあ』「そ、うですか・・」
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