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第66話*天我*②(R)
「苦しくはないか、すみれ」
こくこくと無言でうなずく。
「すみれが胸の中にいるとは夢のようだ」
すみれが震えながらも狐の首に手を回す。
「すみれ?」
「お館様。俺はお館様のものです」
「くっ」
狐の動きが激しくなる。
「ああっ・・おく・・おくに・・おやかたさまあ」
「天我だ」
「え?」
「我が天をつかむとして天我。俺は館の主ではない、お前の夫だ。お館様は終わりだ。
これからは天我と呼べ」
「・・おやかたさま」
「いま何と言ったのかな?すみれ」
そういって動きを激しくする。
「ああっ・・天我・・てん・・があ」
「もっともっと呼んでくれ。そして俺を受けとめてくれ」
「てんが・・もえてしまいそうだけど・すき」
「すみれ」
天我はすみれを抱きしめ体を揺らす。
「あっ・・あっ・・あつい!燃えちゃう」
「うっ、くう・・」天我の動きが止まった。
「なんか熱い・・」
そのまますみれは吸い込まれるように意識が薄くなっていった。
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