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第68話*シマ激おこ*①
すみれは果実水で喉を潤すと、布団の中で深い眠りについた。
天我は汗でも流そうかと部屋を出た。
「お館様」
背中に定規でも入っているようなピシャリとした声で呼び止められ、
振り返るとシマがいた。
「なんだシマか。何の用だ」
「花嫁様は体調を崩されておりますか」
「何を言う、そんなことがあるか。むしろ良い」
「良いのはお館様の方では」
「何が言いたいシマ」
「最近の花嫁様はお休みになっている時間が長く、お食事もあまりすすみません。先日、人形(ひとがた)をされていたお館様となにか関係が」
「人の形をとったのは術に鈍さがでていないか確認していたまでの事。深い意味なぞない」「天狐ともあろうお方が腕が鈍ると」
「お前は何が言いたいのだ」
「花嫁様はお館様を愛してはおりません」
天我の顔が凍りつく。昨夜を思い出し重い声で答える。
「かまわん。俺は愛している」
「花嫁様は愛することを恐らく知りません」
『そんなことは知っている。昨夜言われたばかりだ』
「これからしていくことだからです」
「どういうことだ?」
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