71 / 95
第71話*黒い来訪者*
「あ、鳥」
すみれは窓の外を見ながら鳥に目をやっていた。
「・・とり?」
その鳥の影はどんどん大きくなり、屋敷にまっすぐ向かってきていた。
「人?」
人の形をしたような大きな鳥がどんどんこちらに向かってくる。
恐怖ですみれは柱の陰に隠れた。ガラガラガラッ。勢いよく扉が開く。
「シマさーん、いるー?」
黒い大きな翼を持つ、真っ黒い姿の男が入ってきた。
「灰羽様、そのような大声を出さずとも」
シマが現れてその男の対応をする。
「ん?」
何か違う匂いの気配に気づき、奥をのぞき込むとすみれがいた。
「え、人間?シマさん今日の飯?」
「それを申せば本日の夕餉はやきとりになりますかと」
会話が耳に入ったすみれは、くるりと向きを変え奥に走っていく。
「天我。てんが-」
「あ、名前よばせてんの?」
「あの方はお館様の花嫁様でございます」
「え、花嫁」
「灰羽!」
「よう天我」
挨拶と同時に拳が来た。
「いてえっ」
「灰羽!貴様すみれを怯えさせただろう」
「すみれ?ああ、さっきの花嫁様ってやつ?だってまさか天我が人間をさ-」
ガツッ
「いてえよ」
「理由など聞かん。すみれを怯えさせるな」
「は-。花嫁様溺愛なのね」
ともだちにシェアしよう!