「いや－。さっきはごめんね。驚かせちゃって。俺、天狗の灰羽」 「いえ、こちらこそきちんと挨拶もせず失礼を」 「へ－。やっぱ、べっぴんさんだね。天我の一目ぼれだろう？」 「そ、そのような事は・・」 　すみれは赤くなって小さくなるばかりだ。 「灰羽、お前は俺のすみれをからかいにきたのか。用件はなんだ」 「え－。用件はさ－」 　すみれをちらりと見ながら 「前にちょこっと言われていたアレなんだけれど話していい？」 　灰羽の様子にきづいた天我は 「すみれ、少し灰羽と妖の話をするから席を少し外してくれ」 「はい。かしこまりました」 　二人に深々と頭を下げ、すみれが部屋を出る。 「あそこまでべっぴんさんだと天我の気持ちもわかるわあ」 「今晩の夕餉はやきとりか」 　何を話しているんだろう。でも妖って言っていたから俺にはわからないよね。 「んじゃ－。今日はひとまず帰るわ－」 「シマさ－ん。履物－」 　あの人天狗だって聞いたけれど、天狗ってみんな明るい人たちばかりなのかなあ。 「お、花嫁さん発見」 「あ・・」 「あ―そんなに身構えないで、さっきは色々ごめん。天我とは付き合いが長いから、ついね」 「あ、大丈夫です。今日はわざわざありがとうございます」 「う―ん。天我が閉じ込めておくのも無理ねえなあ」 「？」 「あ、これ花嫁さんに」 　小さな小瓶を渡された。 「珍しい水あめだよ。ほら俺たちは翼で色々なところを飛ぶからね。たまに珍しいものも見つけるのさ。今日のお詫び」 「またくるからよろしくね」 「はい。あめもありがとうございます」 「水あめかあ・・」 　すみれは丸い鈴みたいな入れ物をころころ転がす。