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第76話*偽りの愛している*
「すみれ、すみれは俺のことが好きか?」
「んっ・・あんっ・・だあいすきい」
「それなら一度好きではなくて愛していると言ってくれぬか?」
記憶に残るのか残らないのかもわからない。水あめのせいで行動もおかしい。
心ここにあらずだ。気持ちが入っていなくていい、一度すみれの声で聞きたかった。
一瞬きょとんとしたすみれだったが、するすると天我の顔に近づいてきて、
「愛してる」
「!」
「天我、愛してる」
「生涯ずっと天我を愛してる」
すみれは軽く唇に触れる。
「ね。愛する愛する旦那様」
言われてうれしいのか、
言わされて悲しいのか、すみれの無邪気な声で愛を囁かれて、こんなに心に穴が開くなんて。
聞きたかったすみれの声で。
聞かなければよかったすみれの声で。
天我は思いきりすみれを突き上げる。
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