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第77話*すみれの本心*

「こほ。こほ」 「どうしたすみれ」 「あ、おはようございます。なんか喉がかさかさして」 「昨日は少し乾燥していたからな。ほらそこに果実水がある。ゆっくり休め」 「はい」 『やはり記憶はないのか』  すみれは深い眠りに入っていった。 「すみれ、すみれ」 「ん、天我様どうしましたか」 「もうずいぶん日が高くなった。まだ起きぬから体調でも悪いかと思ってな。大丈夫か」 「あ、はい大丈夫です。ご心配をおかけして・・」  あわてて起き上がるすみれを天我は引きとめた。 「別に好きなだけ横になっているがいい。ゆっくり休め」 「すみません、起きていたんです。昨日何かいい夢を見て」 「いい夢?」  天我はぎくりとする。 「二人でずっと庭の花を見ている 夢です」 「そうか」  布団のそばにより、優しくすみれの頭をなでる。 「でもいつまで見られるんだろうって」 「天我は天狐だから二千年くらい生きるってシマさんから聞いて、でも俺は人間だからいつまで一緒にいられるかなあって」 「すみれ・・」 「お願い天我。俺のことずっと忘れないで」  いつの間にかすみれ色の宝石にはあふれんばかりの涙をうるわせていた。 「馬鹿なことを言うな!お前にそんな悲しい思いなど絶対にさせるものか。泣くな!お前を泣かせないと俺は誓った」 涙の止まらないすみれを天我は思いきり抱きしめた。

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