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第90話*目覚め*
「・・まぶしい」
横を見るとすみれが寝ている。
『そうか、帰ってこれたのか』
釣り椅子で寝ていた灰羽が気づく。
「花嫁さん。花嫁さん!天我が目を覚ましたぞ」
ガバッとすみれが起きる。
「天我、天我、大丈夫?」
「すみれ。お前の顔がまた見れる」
「やっぱりあのお肉の力ってすごいのかなあ」
すみれは涙を隠せない。
「肉?肉とはなんだ灰羽!」
気まずそうに灰羽は口を開く。
「花嫁さんがさー、天我に肉喰わせないと舌噛むって騒いでさあ・・」
「バカ者。あれはすみれのもの俺なんかに使ってどうする。俺など放っておけば治る」
「じゃあ天我が目を覚ますまで、俺毎日待っていなきゃいけないの?」
止まらない涙ですみれが言う。
「天我は俺の幸せをわかっていない」
すみれはすっと立ち上がると寝所を出て行った。
「花嫁さんはさ、不老不死なんかより、自分の生の間ずっと天我と居たいのさ。自分のために大怪我した天我なんて見たくなかったんだよ」
灰羽が諭すように言う。
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