90 / 95

第90話*目覚め*

「・・まぶしい」  横を見るとすみれが寝ている。 『そうか、帰ってこれたのか』  釣り椅子で寝ていた灰羽が気づく。 「花嫁さん。花嫁さん!天我が目を覚ましたぞ」  ガバッとすみれが起きる。 「天我、天我、大丈夫?」 「すみれ。お前の顔がまた見れる」 「やっぱりあのお肉の力ってすごいのかなあ」  すみれは涙を隠せない。 「肉?肉とはなんだ灰羽!」  気まずそうに灰羽は口を開く。 「花嫁さんがさー、天我に肉喰わせないと舌噛むって騒いでさあ・・」 「バカ者。あれはすみれのもの俺なんかに使ってどうする。俺など放っておけば治る」 「じゃあ天我が目を覚ますまで、俺毎日待っていなきゃいけないの?」  止まらない涙ですみれが言う。 「天我は俺の幸せをわかっていない」  すみれはすっと立ち上がると寝所を出て行った。 「花嫁さんはさ、不老不死なんかより、自分の生の間ずっと天我と居たいのさ。自分のために大怪我した天我なんて見たくなかったんだよ」 灰羽が諭すように言う。

ともだちにシェアしよう!