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〇放課後の教室(二人きり) ≪波多野の右眉に虐待を受けたため傷が付いている。ガーゼはまだ貼っていない≫ 自分の席に座る波多野。 夏野は、そんな波多野の正面に立ち、左手は机に手を付き、右手は波多野の傷跡を確認するように前髪を掻き上げている。 夏野「………大丈夫か?』 波多野「…しょうがないよ。だって俺は、実の子供じゃないもん……。当たり前のことだよ」 夏野を心配させまいと、波多野は空元気に笑って見せる。 そんな波多野を見て、夏野は悔しそうな表情を浮かべる。 夏野「暴力が当たり前なわけないだろ…っ」 波多野「あはは、これくらい大丈夫だって。それに、俺としては住む場所を与えてもらっているだけでも、十分過ぎるほど二人には感謝しているよ」 夏野「……波多野…」 波多野「だから、先生がそんな顔しないで。折角のイケメンが台無しだよ」 夏野「……こら、茶化してくれるな」 夏野からの思いやりが嬉しくて、満面の笑みで笑う波多野。 波多野「えへへ。まあ、先生からの俺への愛は存分に伝わっております。いつもありがとうね」 夏野「………ったく。本当にお前ってやつは…。そんなことを言われたら、これ以上何も言えなくなるだろうが」 波多野「本当にありがとうございます」 夏野「…本当はすぐにでも俺の家に連れて帰りたいところだが、今は我慢しておく」 ここで夏野も悪意なくニヤッと笑う。 夏野「その代わり、お前が卒業した時は覚悟しておけよ。嫌だって言っても、無理やり一緒に住まわせるからな」 波多野「ふふふ。はーい」 ここで場面展開するようにフェードアウト。 〇背景白(文字だけ) 波多野(心の声)「叔父や叔母に暴力を振るわれていた俺の家庭事情を知っていた上で、俺の希望通りに問題にはせず、ずっと陰で支えていてくれていたのも先生だ」

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