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☆弟(?)ルートだって?☆

※ ※ ※ 「……え__ねえったら、早く起きてよ……お兄様ってば……っ……!!父様と母様が玉座の間で待っていらっしゃるって……お客様も来ているって仰ってたよ」 (ん……っ……誰かの甲高い声が聞こえる――ええっと、確か主人公には妹キャラのアリスがいた筈____ってことは、この可愛らしい声は……待ち望んでたアリスのものか……) 《アリス》とは【☆セレスティア物語☆】のキャラクターのうち、主人公の妹という最も身近な存在で――だからこそ、攻略キャラになり得ない存在でもある。 しかし、見た目といい性格といい――実は俺が最も気にいっているキャラなのだ。ゲームの仕様上で恋愛感情込みの関係になれないのは、かなり歯がゆく、もどかしい。悲しいことだが、妹キャラ《アリス》の攻略ルートは存在しない。 小鳥のように可愛らしい声____。 海のように青く澄んでいて周りの者たちが見惚れるほどに美しい瞳____。 雪のように白い滑らかな肌____。 腰まであるウェーブがかった金色のきらきらと煌めく髪の毛____。 その全てが、俺の理想の姿だといっても過言ではなかった。他にも、主人公(俺)の《家庭教師 》という位置付けのキャラクターや、《幼なじみ》といったキャラクターはいるものの天使のような見た目で尚且つ可憐で穏やかという《アリス》というキャラクターは俺の好みドストライクなのだ。 ゆさ、ゆさと少しばかり乱暴に揺さぶられながら俺は寝惚け眼で体の上に乗っかっている《アリス》の方へ視線を向ける。 だが____、 「……い、おい……さっさと起きろって言ってんだろ。まったく相変わらず鈍くさい奴だな。おまえが兄とか……信じたくないんだけど。父様と母様が仲良くしろって、うるさいから今までは猫かぶって《お兄様♪》とかって普段は呼んでやってるけど__おまえ、デレデレしてんなよな。ニヤニヤして、気持ちわるい……っ……」 「……っ____!?」 思わず、無言のままガバッと勢いよく飛び起きてしまった。 【☆セレスティア物語☆】の《アリス》は――本来であれば、こんな汚らしい言葉は吐かないはずだし、少し病弱気味な主人公(俺)に対しても常に『愛おしい、お兄様』とか『私の大事なお兄様、体調は如何ですか?』といった控えめで優しい言葉をかけてくれるような令嬢キャラのはず____だった。 けれど、主人公(俺)の目の前にいるのは俺が思っていたはずの妹キャラ《アリス》とは似ても似つかない正に【別キャラクター】といっては過言がないくらいに掛け離れた存在なのだ。 とりあえず声のことはひとまず置いておくとする___。 既存のキャラクターである《アリス》は海のように青い瞳のはずが、睨み付けてくるその瞳は太陽の如き黄金色だ____。 同じように、雪みたいに白いはずの肌は海で日焼けしたかのような薄めの褐色だ____。 腰までウェーブがかった髪型は《アリス》とさほど変わらないものの、これまた既存のキャラクターと色が違い、きらきらと煌めく金色ではなく奇抜としか言い様のない青紫色だ____。 「き、きみは……いったい……誰なんだ!?」 「は……っ___おまえ……とうとう自分の弟の名前まで分からないくらい阿保になったのか?よし、それじゃあアホなお兄様に教えてやる――僕の名前は《アレス》だ。ほら、せっかく教えてやったんだから……土下座して礼を言えよ……お兄様?」 身内に対して《きみ》呼ばわりするのは、いくらゲーム内とはいえ明らかにおかしいのではないのか――などと思いながらも、困惑したせいで震える声でそう尋ねると、俺が勢いよく飛び起きたせいで額が互いにぶつかり合い、少し赤くなった額を擦りつつ此方を睨み付けたままの《アレス(?)》が怪訝そうに眉を潜めると鼻高々に俺を見下しながら生意気な態度で言い放つのだった。

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