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☆弟(?)ルートだって?☆

(土下座なんて、冗談じゃない__こんな意味不明な状況で挙げ句の果てに年下の妹だか弟だかに見下されて……堪るかっ……) 今まで黙り込んでいた俺だったが、ふいになんともいいようのない怒りがふつふつと沸いてきたため先程よりも少し強めに弟(本来は妹のはず)を睨み付けた。 すると____、 「……ちっ、仕方ねえな……アホなお兄様があまりにも可哀想だから、僕の言うことを聞かざるを得ない状態にして土下座しやすくしてやるよ……優しい、優しい弟の僕に……感謝してよね?」 口の悪いアレスが本来のキャラクターである【アリス】にあるまじき、舌打ち混じりの汚い言葉を吐き終えると、どこからか小瓶(赤紫色の液体が入っている)を取り出して、おもむろにそれを俺の口に近付けると勢いよくその怪しげな液体を飲み込ませた。 口から、謎の赤紫色の液体が零れ、白いシーツに染みを作る。 「ん……っ___んむっ……」 「ダメな犬には、お仕置きしないとな……オープン、ステータス!!」 恥ずかし気もなく、本来――俺が住む【ダイ二チキュウ】の《晞京(ききょう)都》でダンジョン☆ウォーカーと肩を並べるくらいに大人気なゲーム作り指南サイトでの決め台詞である「オープン、ステータス!!」とアレスがドヤ顔で言ったものだから思わず吹き出しそうになってしまった。 そのゲーム作り指南サイトでは、『オープン、ステータス!!……だって、ちょっと古臭くない?確か、昔の流行り文句だったよね?』たとか――『今時の、つーかこれからのゲームではオープン、ステータス(笑)とかキャラクターに言わせないだろ』などと閲覧者からボロクソに言われている決め台詞なせいだ。 すると____、 「な、何だよ……何をアホ面晒してんだ、なっさけないお兄様?僕を見てニヤニヤするくらいなら、鏡で自分の姿を見てみろよ……つーか、僕に対して嬉しそうに尻尾を降ってるなよ……気持ち悪い!!まあ、ちょうど良かった……僕に従うペット……すっごく欲しかったんだよなぁ――日々のムカつくことも、周りの奴らに気を遣う息苦しさもこれで解消できるしさ♪」 「な……っ____なっ……何だよ、これ!?」 悪戯を思い付いた子供のような意地の悪い笑みを浮かべつつアレスから差し出された豪華な装飾が施された手鏡を覗き込み、本当に間抜けな面を晒しながら俺はすっとんきょうな声をあげてしまう。 そこには、本来であれば《ダンジョン☆ウォーカー》に存在していて《セレスティア物語》には存在しない筈の犬の獣人姿となった俺が映り込んでいるのだった。

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