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☆ 本来のゲームに存在しない筈のキャラクターが現れただって ? ☆

鏡に向き合う謎の男キャラクターの姿が徐々に俺が見慣れている奴の姿へと変わっていく。 俺へのストーカー疑惑が濃厚だった辺田 那津男 ____。 鏡の中の姿は本来であれば存在しない筈の銀髪、緑目のキャラクターがうつっているのに対してニコッと微笑みながら此方を振り返った男の姿は《ダイニチキュウ・唏京都》の大学内で俺が最も関わりたくなかった男のものだ。 「じ、地味男……お前が――どうしてここに……っ……!!つーか、あの後も、ゲーム店てバイトしてんじゃなかったのかよ!?」 「や、やだな……那津男って呼んでくれなくちゃ。そ、それにバイトなんかよりも、只野くんの様子の方が気になるに決まってるじゃないか。だって、だって……こんなにも只野くんのことが大好きなんだから。それなのに、只野くんったら……このバグだらけの不良品ゲームに出てくる弟キャラクターと、あんな仲良くするなんて……。ああ、本来なら妹キャラクターなんだったっけ?」 その辺田の言葉を聞いて、今度は俺の動きが固まってしまった。 【バグだらけの不良品ゲーム】というのも気になったものの、それよりも気になったのは【弟キャラクターとあんな仲良くするなんて】という言葉の方だ。 「お、お前――さっきのアレスとのやり取り……見てたのか!?」 「そりゃもう、ばっちりと見てたよ。だ、だってボクはそれを阻止するためにこのゲームにDAIVしたんだから。まあ、世界一大好きな只野くんに会いたかったっていうのもあるけど、事態はそう単純でもないんだよね。只野くんは、ダンジョン☆ウォーカーっていうゲームはもちろん知っているよね?」 どうやら、辺田の説明によると《☆セレスティア物語☆》はバグが多く散々な評価だったらしい。しかも、何者かの仕業によって《☆セレスティア物語☆》と巷で大人気だった《ダンジョン☆ウォーカー》というゲームを融合させられてしまったらしく今の《ダイニチキュウ・唏京都》ではとんでもない騒ぎとなっているらしいのだ。 しかも、その騒ぎを解消させようと互いのゲーム会社の管理人らがゲーム内にDAIVしようとしても何故かログインすら出来ないらしくお手上げ状態とのことだった。 「《ダンジョン☆ウォーカー》と《☆セレスティア物語☆》が融合だって??そんなバカみたいな話なんて簡単に信じられるかよ。まったく、いくら俺の気を引くためだからって……そんな____」 「じ、じゃあ……これからボクと一緒に城の外に出て散歩でもしてみる?そ、そうすれば……ボクの話が嘘じゃないって分かるよ?いや、嫌でも認めざるを得なくなるね。で、でも……それって只野くんとデート出来るってことだよね……嬉しいなぁ」 こうして、俺は不本意ながらも予想外の乱入者である【 辺田 那津男 】の手によって、一時的とはいえ時が止まり《動き》を失ったゲーム世界でストーカー疑惑のある男と共に散歩をする羽目となってしまったのだ。 もちろん、最初は全力で拒否をした。 それでも、俺が頷かざるを得なかったのはニコッと微笑みを浮かべつつ囁きかけてきた奴のある言葉のせいだ。 「も、もしも……これから只野くんが散歩という名のデートに付き合ってくれたら……元通り時を戻してあげるよ」 その言葉を聞いた直後、俺はまるで鉛でも乗っかっているかのように重い腰をあげて《辺田 那津男》と共に時が止まったせいで静寂に包まれている城から出ると、《ダンジョン☆ウォーカー》と《☆ セレスティア物語 ☆》が融合しているのが確実に分かる物が存在するという怪し気な場所まで歩いて行くのだった。

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