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生意気な弟と二人きりで過ごすイベントたって!?
* * *
「____で、結局あの男とは何の話をしていたんだ!?そもそも、あいつはいったい何のために外国から、このセレスティアまで来たっていうんだ。まったく、父様も母様も目に入れても痛くないくらいに可愛がっているボクに何も教えてくれないなんて……っ……!!おい、聞いているのか?聞こえているんなら、早くボクの質問に答えてくれない?」
アルトから、わざわざ外国からこの王宮を訪ねた理由となる話を聞いた後に三人と別れると、大した事件なんて起こっていない筈なのに、しつこく纏わりついてくる疲労感を取るべく自室へと戻ることにした。
すると、自室には何故かこの部屋の正当な主だといわんばかりに堂々とふんぞり返りながら椅子に座り、不服そうな顔をして眉をしかめているアレスがおり、室内に一歩踏み入れるや否や偉そうな口調で此方へと文句を言い放ってきた。
「お、お前こそ……何で、ここにいるんだよ――熱心に勉強しているんじゃなかったのか?」
「な………っ……せっかく、このボクが____」
と、何故か途中で言葉を切ったアレス。
それと同時に、アレスの頭上にあるハートマークが回転しながら、やがて一つだけ消え去ったのが見えた。
(いったい、何なんだ……このハートマークは____)
バグなど存在しない本来の《セレスティア物語》には選択肢システムだけでなく、このようなハートマークがキャラクターの頭上に表示される仕組みなど存在しなかった。
赤く光るハートマークは全部で三つあり、今アレスの頭上から一つ消えたため残りは二つだ。
先ほど、アルトに出会った時も頭上にートマークが三つあったのを思い出す。でも、父母と母の頭上にはハートマークなど一つも存在していない。
更に言うと、広間にズラリと並び畏まっていたメイドや執事達の頭上にもハートマークは存在していなかった。
ふと、ここであることを思い出す。
先ほどまで語り合っていた【アルト】の頭上には、アレスと同じく頭上に三つのハートマークが存存在してること____。
だだ、唯一違うのはアレスのように赤く光っていたわけではなく、青く光り続けていたという点だ。
何故、二人のキャラクターの間にそのような些細な違いがあるのか、まるで見当もつかずに頭を悩ませてしまう。
更に、先ほど【アルト】から受けた《ある依頼》に関しても目の前で子犬のように甲高い声で喚き続けている生意気な弟へ告げるべきかという点でも考えただけでも気が滅入ってしまう。
しかしながら、『ここで何もしないという選択肢を選んだとして、この先ストーリーが進まなくなってしまうかもしれない』という最大の壁が俺を悩ませる。
「あ~……アレス、よくぞ聞いてくれた。実は____」
ぼりぼり、と頭を掻きつつも渋々ながらもアルトとの会話のやり取りを説明することにしたのだ。
「はあ……っ……!?たった、それだけの事情で何でボクに黙ってたんだよ。単に、あの男の仲間の兵士達が町外れの洞窟に入って危険だから、助けるためにお前に依頼したってだけの話じゃないか…………」
「い……いや、それは____」
(単に面倒なことになりそうだから、なんて言ったらコイツは烈火の如く怒り狂うだろうなぁ…………)
などと、ぼんやり思いながら、いつの間にか椅子から立ち上がり、すぐ目の前に来ていたアレスの顔を見つめる。
すると____、
「…………」
この世界に来たばかりの頃のように、無言で俺を睨み付けてくるアレス。
だが、その両目が潤んでいるように見えるのは俺の気のせいなのだろうか。
「おい、アレス……お前――急にどうしたんだ?」
「……っ____決めた!!ボクも、お前とあの男と一緒に洞窟に行くことにする。お前から、あの男に話をつけてよね、分かった!?」
びしっと人差し指を俺の眼前スレスレに近付けた後に、有無を言わさずに勢いよく言い放ったアレスに対してゲンナリすると同時に安堵してホッと胸を撫で下ろす。
その言動によって、いつもの生意気でワガママな【アレス】のままだと再認識することができたからだ。
そうとはいえ、俺は面倒ごとが更に増えてしまったことに溜め息をつかざるを得ないのだった。
「ったく…………気付けよな、鈍感____」
部屋を出て行こうとする俺の背中に向かって【アレス】がボソッと呟いたことすらも知らずに____。
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