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洞窟内でトラブルだらけだって!?
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(ここがダンジョンウォーカーに出てくる洞窟型のダンジョンか……にしても、まさかお堅いイメージのあるソルトがバグって……こんな変人キャラになるなんて思いもしなかったぞ____)
俺が渋々ながらアレスに【人助けのためのダンジョン探索】を相談してから二日が経った。
その間に、俺はアルトと二人きりで王宮外の街へと出向き、必要な装備――武器から防具(詳しくは知らない)やらを購入して準備を整えたのだ。
アレスはというと、その間――ずっと不貞腐れたような顔をしながら俺達に嫌味を吐き捨てていたが、いざ目の前の洞窟ダンジョンを目にした途端に目の色を変えて、あろうことか意気揚々と真っ先に進んでいってしまった。
俺は慌てて、はしゃぎまくるアレスを追い掛けて中に入ったのだが、アルトはアルトで何やらブツブツと独り言を呟きながら溢れんばかりの興奮を抑えているかのような態度をとっていたため不安を抱いてしまう。
しかし、それよりも不安なことが一つある。
それは、この【ダンジョン・ウォーカー】というDAIVゲームのことを碌に知らないということ。
そもそも、俺は元々ゲーム好きではあるものの巷で流行っていた【ダンジョン・ウォーカー】という冒険を主としたものよりも、個性のある色々なキャラクターと友情なり恋愛なりの絆を育んでいくものの方が好みであり、【ダンジョン・ウォーカー】に対しては『やたらとCMしているのだから流行ってるんだろうな』くらいの感想しか持っていなかった。
「おや、どうしたのかな……ああ、そういえば実際にここに来るのは始めてなんだったね、それにしても、意外だねぇ……ナンダレダ、キミは昔からずっとこのダンジョンの内部に入ってみたいと憧れていたというのに……気分でも悪いのかい?」
先程まで懐から得体の知れない緑色や紫色といった謎の液体と睨めっこしながら興奮しつつブツブツと独り言を呟いていたアルトが、気にかけてくれている言葉さえ、すんなりと耳に入ってこない。
(それは……誰、だ……俺じゃない____俺はこんなダンジョンに来てみたいと思ったことなんて……一度だって____な……)
未知なるダンジョンの暗闇を目の前にして不安なことが頭をよぎり、尚且つ一度だけ辺田に半ば強引に連れて来られたことを思い出した。
そして、その時の彼の自信ありげな笑顔が瞼の裏に浮かび上がってきたおかげで、少しだけ不安が解消されかけた直後に、いつの間にか引き返してきていたアレスが突如として俺の腕を掴む。
心もとないランプの光しか光源がないため、すぐには分からなかったのだけれど、普段は生意気で口の悪いアレスが珍しく神妙な顔つきで俺の方をじっと見つめているのだ。
「ど、どうしたんだ……お前――あんなに、はりきってたのに……この先に何かあるのか?」
「…………別に」
そう問いかけるや否や、アレスはふいっと後ろを向いてしまい、またしても真っ直ぐ進んでいってしまう。
「おやおや、キミらは随分と仲がいいみたいだねぇ……いやいや、びっくりしてしまったよ。アレス君はてっきり、ソルージャ殿にお熱なのだと思っていたんだけどねぇ。まあ、それはさておき……実際のところキミはアレス君に対してどう思っているんだい?」
「な……っ____アレスだけじゃなく、アルトまで何を言っているんだよ。俺はアイツのことを、生意気な弟だとしか思ってない……っ…………だいいち、俺には____」
すると、今度はどことなく愉快げな笑みを浮かべながらアルトが問いかけてきたため、しどろもどろになりつつも必死で答える。
しかし、やはり予想外な質問に対して動揺しきっていたのだろう。
その勢いのまま、俺が気にかけているのは――あれだけ地味な男だと、からかってばかりした《辺田 那津男》だという、ゲームの中という別世界にいるアルトには告げる必要のない余計なことまで言ってしまいかねないため、言い切る寸前で何とか黙り込むことにするのだった。
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