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窓が開いていた

「こんにちわ!」 背後から明るい女性の声が聞こえて来た。 恐る恐る振り向くとスラッと伸びた足に引き締まったウエストで肩まである綺麗な髪がユラリと風になびいていた。 ドアは閉められたが窓は全開だった。 「あの・・。」 「初めまして、お色直しのドレスを持って来たのよ。」 「お色直しのドレス?」 「あらっ?直ちゃんから聞いてないの?」 「衣装を変えるのは聞いてます。けれどドレスとは聞いてません。」 女性は腕を組んで険しい顔をして携帯で何処かに連絡をした。 「もうっ!無視するのね。」 女性は携帯をソファに掘り投げると少し考え込んでから僕の方に花が咲いたかの様な笑顔を向けた。 「やっぱり写真より実物がいいわね。」 「あの、宮垣聖輝と言います。」 「私ったら自己紹介まだね。久遠桃(くおんもも)と言います。直ちゃんと私の弟達が親友なのよ。それで話が長くなるから職業はメイクさんかスタイリストて感じで思ってくれていいわ。」 「はい。」 「じゃあ、早速!」 僕は強引に座らされると前髪を上げられて何が始まるのかと身体を強張らせた。 パワフルだし何故か言われるままにしないと後が怖い様に思えた。

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