652 / 699

騒めき

扉の前に立つと直さんに少し待つ様に言われた。 さっきから緊張し過ぎて気分が悪くなり始めていたが異変に気付いた蒼大が優しく抱き締めてくれた。 「聖輝、大丈夫だから安心しろよ。本当は今すぐにでも聖輝を抱きたい。それにこんな可愛らしくなった聖輝を誰にも見せたくないんだ。」 「可愛らしくなったてもういい歳だよ。」 「歳は関係無いさ俺から見たら可愛いんだよ。」 「ありがとう。」 蒼大と話をして少し落ち着いた気がする。 やっぱり頼れるのは蒼大しかいないんだ。 「それではお色直しが終わった模様なので再び蒼大君と聖輝君に入って貰いますがあまりの変わり様にビックリされてグラスなど落とされるかもしれませんので手に持たれてるものはテーブルに置いてください。」 修、なんて説明するんだよ。 確かにドレス姿で現れたらビックリするけどグラスとか落とすか? 「行くぞ聖輝。」 「うん。」 蒼大にエスコートされて中に入ると会場の照明が落とされていてスポットライトが僕と蒼大に当たる。 逆光でよく見えないけれど騒ついていた会場が静まり返っていた。 僕の姿が変だから? 蒼大は会場の静けさも気にせず歩き出して僕達が座っていた席に立つとドッと会場が騒がしさを取り戻した。 聞こえてくる声はどれも『綺麗だ』『可愛い』といったものだった。 「ほらっ、皆んなが聖輝を見てる。見せたくない。」 「蒼大・・・。」 蒼大は少し拗ねた様な顔をしてドカッと椅子に座り目の前のビールを一気に飲み干した。 嫉妬してくれているんだと思うと嬉しくて蒼大を見て微笑むと蒼大は僕の手を引っ張り膝の上に座らせた。 座らせたというかあまりにも突然過ぎて僕は倒れこむ様に座った感じになったのだ。

ともだちにシェアしよう!