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我が家へようこそ 2
「うわっ、凄く美味しいです。」
「本当か?」
大地さんも僕もテンションが上がる。
一口食べてからカスタードの甘さとフルーツの甘さがいい感じでどのフルーツとカスタードを食べても本当に美味しくてタルトもサクサクしていて口の中で全てが混ざり蕩けそうな感じだった。
気付いたら僕はお皿にあったフルーツタルトを完食していた。
そんな僕を見て大地さんは優しく笑いかけてくれた。
「気を使って甘いもの好きだって言ってない事が分かって良かった。なんか目の前で美味しそう食べてくれたら嬉しくなるな。」
「えっと・・・・美味しくて止まらなくなりました。」
「ありがとうな。まだあるから選べよ。」
「はい!」
やっぱりモンブラン?
いや、レアチーズケーキも捨てがたい。
ガトーショコラもいいなぁ〜。
悩むよ。
こんな美味しいケーキだったら毎日だって平気で食べちゃうよ。
毎日・・・・・・。
そうだ僕は死のうとしてたんだ。
暖かい部屋とココア。
美味しいケーキと優しくしてくれた大地さんや美央さん。
新しく生まれた大輝。
僕があそこから飛び降りていたら出会えなかった人達。
僕が彼奴らにヤられてなかったらココには居なくて大好きな蒼大の側にいたはず。
蒼大・・・・・会いたい。
会って抱きしめて欲しい。
でも僕は汚れてしまったからもう蒼大の側には居れない。
僕はフォークを持ったまま声を殺して下を向いて泣いていた。
「聖輝?大丈夫か?」
大地さんが慌てて僕の隣に来て抱きしめてくれる。
大地さんは暖かくて蒼大と同じ位に優しい人。
今だけ大地さんの胸で泣いて良いですか?
蒼大だと思っても良いですか?
大地さんは僕が落ち着くまで背中を撫でてくれていた。
大きくて暖かな手。
僕はこの手に命を救われた。
でも僕が欲しいのは蒼大の手だけ・・・・・・・。
叶わない僕の願い。
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