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我が家へようこそ 5

カレーをご馳走になりお風呂まで入らせてもらった。 僕は死ぬ気だったから携帯とお財布しか持っていなかった。 「聖輝、俺のスウェットでいいか?下着は新しいのがあったからそれ履いといてくれるか?」 「すみません。ありがとうございます。」 いつしか大地さんは僕を呼び捨てにしていた。 本人は気づいていないかもしれない。 大地さんも奥さんが居ないから大変なのに僕なんかの世話して本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。 明日は両親が来る。 これ以上大地さんに迷惑かけれないし両親に本当の事を話して家に戻り学校とか辞めようと思っていた。 「聖輝、今日は付き合わして悪かったな。随分遅くなっちまったからそろそろ寝るか?明日はご両親が来るからな。」 時計を見ると日付が変わろうとしていた。 それに僕を見つけてくれた大地さんが謝るなんて本当に親切で優しい人。 「僕こそ沢山迷惑掛けてしまってすみません。明日両親に話して家に戻ります。多分学校はやめる事になると思います。」 僕がそう言うと大地さんは考え込んでしまった。 僕は大輝くんが大きくなったら胸を張って生きていたいから一旦学校を辞めてもう一度考えてみたいんだ。 生きていくためにも強くなりたい。 「聖輝さ、嫌じゃなかったらココで一緒に住まないか?」 「へっ?」 「こっちに転入したら学校辞めずに済むんじゃないか?聖輝の気持ちが落ち着くまでここに居ればいいよ。」 「でもこれ以上迷惑掛けれません。」 「迷惑とは思わない。美央も大輝の事で大変になる。聖輝が居てくれて店とか家の事を手伝ってくれたら助かるんだけどダメかな?」 「僕がいても良いんですか?」 「どちらかと言うといて貰いたい。お願いしたい。」 大地さんは僕に頭を下げた。 こちらが置いてくださいとお願いしないといけないんだ。 それを大地さんから提案してくれた僕にとったら救われた気持ちでいっぱいだった。 「大地さん。僕、ここに居たいです。よろしくお願いします。」 「そっか、よかった。明日ご両親に俺からお願いしてみる。」 「よろしくお願いします。」 「聖輝、我が家へようこそ。」 大地さんが笑って手を差し伸べてくれた。 僕はその手を両手で握り頭を下げた。 明日、ちゃんと分かってもらうまで両親に話しをしようと心に決めた。

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