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ケーキ店 1
少しずつだけどクラスの生徒と会話が出来るようになった。
自分では大丈夫だと思っていたが友達に裏切られたという事が胸に引っかかり他の人と上手く話が出来なくなっていた。
それでもなんとか自分を変えたくて強くなりたくてなるべく人と関わるようにしている。
家に帰ったら夕ご飯までは店の手伝いをして色んな人と接して常連様とお話しをする様に僕なりに努力はしていた。
学校ではあまり笑わないけど店だと大地さんや美央さんそれに大輝が居るから自然と笑顔になっていた。
そして蒼大の事は忘れないようにと自分に言い聞かせた。
「聖輝、もうすぐ誕生日ケーキ取りに山野さんが来られるから箱とローソク用意してくれるか?」
「はい。ローソク何本?大地さん。」
「長いの5本で箱に付けといてくれ。」
僕は28cmのホールケーキが入る箱を組み立ててローソクとケーキ箱を入れて持って帰るビニール袋を用意していた。
カランカラン。
店の引き戸が空いてドアについているベルが来客を知らせる。
「いらっしゃいませ。」
僕は開いたドアの方を向きながら挨拶をするとそこに立っていたのは悠真だった。
もしかして山野って悠真の事?
「あれ?聖輝バイト?」
「違う。僕はここに住んでるんだ。」
クラスでは僕の事をあまり話さないから悠真は何も知らない。
「じゃあ、家の手伝いだ。俺、よくここに来るけど聖輝と店で会うの初めてだな。」
「あっ・・・うん。僕は今年の2月くらいから居候してるんだ。」
「そっか、だから会わなかったんだな。」
悠真はふんわりと笑った。
「聖輝?お客様か?おっ、悠真。久しぶりだな。お母さんが来るかと思ってた。」
「大地さんお久しぶりです。クリスマスから忙しかったんで本当にお店に来るの久しぶりですよ。」
悠真って呼び捨てで大地さんと呼ぶ2人
悠真が大地さんの店によく来ていた事が分かる。
「加奈ちゃんの好きなケーキ出来てるぞ悠真。」
「毎年ありがとうございます。加奈も喜びます。」
「聖輝。そこの予約のケーキ箱に詰めてくれるか?」
「はい。」
僕はショーケースに飾られていたケーキを取り出すとさっき用意していた箱にゆっくりと入れて蓋をしビニール袋に入れた。
「大地さん。俺と聖輝同じクラスなんですよ。店に来てビックリしましたよ。」
「そうなのか?聖輝と仲良くしてくれな悠真。」
「俺は仲良くしてるつもりですよ。」
仲良く・・・・・下の名前で呼び合ってるのが仲良くするという事なのかな?
クラスの他の生徒よりは話はするけどそれだけで仲良くと言うんだろうか?
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