66 / 699

修学旅行 2日目 3

「聖輝。なんだろ?」 「お前誰だよ。」 悠真の低い声がトイレに響いている。 きっと逃げたらダメだ。 今は悠真も側にいてくれるだからちゃんと話をしなきゃいけないかもしれない。 「久しぶりだね。圭。」 振り返ると圭は顔をグチャグチャにして泣いていた。 どうして圭が泣くんだよ。 圭が僕をあんな目に合わせたのにどうして泣けるんだよ。 「聖輝に・・・会ったら謝らないとってずっと・・・ゴメン。まさか、あんな事になるとは思わなくて・・・・・許されるとは思ってないけど謝りたくて・・・・・・・。」 「圭って言ったか?少し落ち着いて話せよ。先に泣き止め話が分からなくて聖輝も困ってるからさ。」 あんな事にって圭がさせたんじゃないの? 圭が泣き止み制服の袖で涙を拭ってから僕に深々と頭を下げた。 「すまなかった。聖輝の画像と動画は全て俺が回収して消去した。言い訳にしかならないけど俺は痛めつけるだけを頼んだんだ。けど彼奴らはそれ以上の事をした。」 「圭があれを頼んだんじゃないの?」 悠真は僕が倒れかけたのを肩を掴み支えてくれていた。 「うん。けど聖輝を殴るようにお願いしたのは俺だから・・・全て俺の責任だ。」 圭を信用していいか分からない。 けど思い出したく無いんだ。 あんな出来事を思い出したく無い。 「もういいよ。圭・・・許すとかまだ出来ないけど・・・・・・・・。」 身体が声が震える。 怖い。 「聖輝は馬鹿か?まだ言いたい事あんだろ?よく内容は分からないけどこのままじゃあダメだろ?」 悠真は真剣に僕を叱っていた。 それは伝わってくるけどまだ僕の心はあの事を受け止めるほど強く無いんだ。 今だって本当は逃げ出したい。 悠真が居たから圭と話さなきゃって思えたけどこれ以上話すと思い出してしまう。

ともだちにシェアしよう!