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修学旅行 最終日 7
僕の両脇を掴んで腕の中に引き寄せると手の持ち主は僕を強く抱きしめた。
「ご・・・ごめん。守ってやれなくて・・・聖輝だけ辛い思いをさせて・・・ごめん聖輝。」
僕の頬にポツっと何かが落ちてきた。
ボヤけている視界がハッキリとした時に僕を見下ろして泣いている人がいた。
「い・・・いやぁ・・・・・み・・・みるな・・・ぼく・・・・・みない・・・・・こんな・・・汚れた。」
僕はその人から離れたかった。
だってこんな汚れた僕に触れたらその人も汚れてしまう。
僕なんかの為に泣かなくていいんだ。
僕は腕の中から逃れようと腕に力を入れたがうまく力が入らなくて更に強く抱きしめられてしまった。
「俺から離れないで聖輝。聖輝は汚くなんかないんだ!」
「だめ!!!!!!はなっ・・汚れちゃうから!!蒼大が汚れちゃうから!!!!!!!」
「汚れたりしない!聖輝に触れても俺は汚れないし聖輝も綺麗なままだ!!!!!!」
そう言って蒼大は僕の頭を掴み噛むようにキスをしてきた。
うっ・・・そ。
蒼大が汚れちゃう・・・僕なんかに触れたら・・・ダメなのに・・・・・。
そう思っていても僕は与えられた蒼大の温かな唇から逃れる事が出来ないで固まってしまった。
ずっと僕が願っていた。
叶わない夢。
蒼大に触れて欲しいとどれだけ思って過ごしてきたんだろう?
叶わない夢で良かったんだ。
蒼大を汚してしまうくらいなら僕が居なくなれば良かったんだ。
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