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シフォンケーキ

「あの、聖輝を助けてくださりありがとうございます。」 蒼大は2人に頭を下げた。 僕も後から遅れて一緒に頭を下げた。 けれど勝手に命を捨てようとしたのは僕なのに蒼大が大地さんにお礼を言うなんておかしいよ。 でもありがとう蒼大。 蒼大の気持ちが嬉しいよ。 「頭を上げてくれ蒼大。蒼大って呼ぶからな。」 「はい。」 大地さんの言葉に蒼大は頭を上げた。 「俺になんかお礼なんて言う必要なんてないんだ。」 「でも、大地さんが居なかったら聖輝は・・・。」 「あの時は強引に病院に連れて行ったんだよ。大輝が産まれそうでもしかしたら聖輝が産まれてきた大輝を見て思い直してくれるんじゃないかと思ったんだ。」 初めて聞いた僕との出会いの時の大地さんの気持ち。 「でもあのまま見捨てて置いてきたら美央に何を言われるかと思うとな怖かった。」 美央さんてそんなに、怖いかな? 蒼大と顔を見合わせて美央に視線を向けると穏やかに笑っていた。 やはり美央さんが怖いなんて考えられない。 2人の間には僕達には分からない事があるんだなと大地さんの様子を見て思った。 「それより、私は蒼大君の横にあるケーキの箱が気になるんだけど?」 「あっ、これ聖輝と約束したシフォンケーキなんです。良かったらみんなで食べれたらなって思って作ってきました。」 えっ? 凄く嬉しいよ。 「聖輝が毎日、凄く楽しみにしてたんだよな?」 意地悪く大地さんが笑った。 「もうっ、大地さん。」 恥ずかしいよ。 確かに凄く楽しみで大地さんにずっと話していたけど毎日とかバラさなくてもいいじゃない。

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