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小さな手

まだ辺りはキナ臭い。 近所の人達がザワザワと集まっていて、消防隊や警察の人達が慌しく動いていた。 目の前で呆然と立ちすくんでいたのは悠真、治樹君、智哉君の3人だった。 「蒼大・・・・・。」 僕は蒼大の腕をギュッと握り締めると目の前で起きている事が夢であって欲しいと願った。 「パパとママいない。」 大輝がそう呟いたのが聞こえて僕は我に返り大輝の方を見ると僕達と同じ光景を真っ直ぐ力強い目で見つめている。 さっき迄泣いていたとは思えないくらい凛とした姿だった。 「だっ・・・大丈夫だよ。パパとママは大丈夫。」 そう言って大輝の手を握ろうと僕は手を伸ばそうとしたが僕の手は震えていた。 こんな手で大輝の手を握っても大丈夫だなんて思えないよ! 「ぼくはへいき。いぶちゃんがしんぱい。」 震える手を自分で握りしめていると大輝が僕の方に手を伸ばそうとしている。 小さな大輝に心配されて僕は昔から弱い人間だ。 強なりたいと思っても弱い人間は弱いままなの? 「聖輝、大丈夫か?」 「うん。大丈夫だよ。」 蒼大や大輝を心配させたくなくて笑おうとするけどうまく笑えないし声も震えている。 しっかりしなきゃと思えば思うほど震えが止まらなくなる。 「大輝を頼むよ聖輝。俺は詳しい事を聞いてくるから此処でまってろ。」 「でも・・・僕が行くよ。」 「聖輝も無理だろうし悠真達も今は動揺してるだろ?」 治樹君は悠真に支えられる形で立っていた。 治樹君・・・・・・大丈夫かな? 僕よりも悠真達の方がショックが大きいよね。 「分かった。蒼大にお願いする。」 大輝を下に降ろして蒼大はしゃがみ込み僕には聞こえないくらいの声で2人は内緒話をし指切りをした。 蒼大が僕に近づいて人目も気にせずにギュッと抱きしめてくれてそれから話を聞きに僕達から離れて行った。 僕は蒼大の背中を見えなくなるまで見つめていると手に温かな感触が伝わってきた。 大輝が小さな手で震える僕の手を握りしめていのだ。

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