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もういいよ
「いぶちゃん。起きてよ。」
「えっ?あっ・・・ごめん。大輝、頭痛くない?」
やけに胸の辺りが重たくて苦しいと思っていたら大輝が馬乗りになって僕を揺り起こしていた。
僕が起きない時はいつもこうやって大輝は起こしに来る。
「痛くない。お腹減ったよぉ〜。」
「分かった。でもお熱計ってくれるかな?ご飯出来るまで良い子にして寝ててくれると嬉しいなぁ〜。」
「お熱計って寝てる。」
元気なら僕の言う事を聞かずに走り回るけれどまだ身体が怠いのか僕の上から降りるとコテンと横になって目を瞑っている。
額に手をやるとまだ少し熱い気がする。
「熱、まだ少しあるね。」
体温計を見ると37度5分。
薬を飲ませる為にお腹に何か入れなきゃだ。
「お粥食べれそう?」
「うん。お粥大好き!」
大輝はお粥が何故か好きみたいでたまに食べたがるから作るんだけど僕は苦手。
病気になって母親が作ってくれたけど炒り卵が無いと食べれなかった。
それも消化に悪いからと沢山は作ってくれない。
僕の場合、スプーンで食べる時には炒り卵7割でお粥が3割だったからね。
どっちが主食かわからない感じだった。
「待っててね。」
「うん。」
僕は額に貼った熱冷ましのシートを新しく貼ると携帯電話を手に取り部屋から出た。
メールか何か入っているかと携帯電話画面を確認したけれど桜子さんからのメールだけで内容は蒼大が帰宅していないという事だった。
何してんだよ蒼大。
「聖輝?」
「あっ、悠真。おはよう。」
「大ちゃんの様子は?」
「まだ37度5分あるんだ。でもお粥を食べたがるから作りたいんだけど良いかな?」
「自由に使えよ。蒼大から連絡は?」
僕は悠真の目を見つめたまま首を横に振った。
「そっか、俺からも連絡してみたんだけど・・・治樹も連絡したけど繋がらないってさっき電話して来た。」
「ごめん。ありがとう悠真。けれど蒼大の事はもういいよ。家に帰って無いみたいだから・・・。」
「聖輝!!」
「あれ?昨日散々泣いたのに涙が・・・・・ごめんね悠真。」
また目から涙が零れ落ちてきて止める事もできずにどうしたらいいか分からなくなってしまっていた。
ただ分かるのは大切な人を失うかもしれない恐怖。
けれど泣いてる場合じゃないんだ。
大輝を早く元気にしなきゃだ!
分かっていても気持ちが追いつかなくてしばらく泣きながらお粥を作っていた。
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