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入院 3
ガサゴソと大ちゃんがお弁当を取り出す。
僕は個室に入れたので窓際にはソファとテーブルなんかが置かれていて大ちゃんはそこに座って袋の中を覗き込んでいる。
「これ、そうちゃんのだよ。僕はハンバーグなんだ。」
「一人で開けれるか?」
「うん。」
大ちゃんは得意げに笑うと一人でお弁当のラップを外して蓋を開けた。
何度か落としそうになりヒヤヒヤしたけど無事に開けれてご満悦だった。
「凄いね。大ちゃんは一人で出来たね。」
「うん。」
可愛いなぁ〜。
なんか凄くギュッて抱きしめたい。
「大輝、少し見ない間に成長したんだ。聖輝がしっかり見てて・・・・・・・ごめん。ご飯食べよう。スプーンとフォークだったら使えるか?」
「うん。ありがとう・・・・・蒼大。」
高校の時みたいにって言われたから呼び捨てにしてみたけどやっぱり外見が大人だからなんか変な感じがするし、蒼大さんを呼び捨てにしたから少しだけビックリした顔をしていた。
「ああっ・・・食べにくかったら言えよ。」
「大丈夫です。どうしてですか?」
「食わせてやる。」
「食わせ・・・・って、あ〜んとかで・・ですよね?」
「手がそれだから無理だったらだ。」
蒼大さんに間近でア〜ンとかされたら僕の心臓壊れてしまうかもしれない。
今だって想像?
妄想しただけで鼻血もんですよ!
あの蒼大からは想像出来ないくらい優しくて格好良くてって、僕は親友とか思ってなかったのかな?
こんな気持ちになるって事は、記憶は失くしたけど凄く好きだったのかな?
でも僕は蒼大から離れるように転校している。
僕に何があったの?
思い出そうとしても靄がかかったみたいで無理をすると激しい頭痛に襲われる。
思い出したくないから失くしてしまったと僕はそう思ったんだ。
だから今が幸せを感じるなら無理に思い出さないようにしようと決めた。
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